G1シリーズが開幕すると、春の訪れを感じますし、栗東は華やかさを増します。報道陣の数が増えるからでしょうね。競馬の世界が注目されていることを感じ、その世界にいる一人として、とても嬉しいものです。
4月の栗東は、桜も華やかさを演出してくれるんですよ。馬場の1コーナーから2コーナーにかけてと逍遥馬道に綺麗に咲き誇って、乗ってる人も馬も花を愛でながら春の風に吹かれています。
ジョッキーを引退して、早1カ月が経ちました。平日は以前と同じように調教をつけていて、土日は調教で跨がることもあれば、臨場で競馬場に行くこともあります。臨場とは、調教師の代行として競馬場に行くことで、たとえば山本先生が阪神競馬場に行けば、僕は中京に行ってレースに立ち会います。
スーツを着て競馬場に行くと……まだ慣れていないから、ジョッキールームにいても調教師の控え室にいても、どこかしら居心地が悪いんですよ(笑)。それに、装鞍所で鞍をつけたり、パドックで号令がかかったら馬に乗る騎手の足を手であげたりと調教師の仕事をするわけだけど、それがぎこちなかったりもします(笑)。みんなに『先生』って呼ばれて、冷やかされっぱなしですしね(笑)。
それにしても、臨場として初めて競馬場に行った日の朝、気持ちが引き締まりました。調教師のバッジをつけて、ネクタイを締めて、身の引き締まる思いをしました。引き締まり過ぎて、競馬場には3時間も早く着いてしまいましたが(笑)。ただでさえ、どこにいても居心地が悪いのにね(笑)。
競馬場で強く感じたことは、馬たちに無事に走ってきてもらいたいということです。もちろんジョッキー時代にもその思いはありましたが、鞍をつけて、馬がパドックに行けばそれとともに移動してと、調教師の仕事は全てが馬中心。馬に付き添っているということに自分が調教師であることを感じましたし、馬たちが無事に走ってこれるよう、祈る気持ちが強くなりました。
また、鞍をつける時、鞍がズレないように確認するんですが、ジョッキー時代は調教師さんたちに『乗ってからもう一度、確認しといてよ』って言われたものですが、つける側になって、その気持ちがよくわかりました。もしズレて、ジョッキーに何かあったら大変ですからね。とにかく、人も馬も無事で、その思いが一層、強くなりました。
このコラムを書いた2日後、北海道の馬産地へ行きます。調教師として行くのは初めてで、いよいよ調教師として動き出します。いまは技術調教師という見習いの立場ですが、いつか先日のドバイでの日本馬たちのように活躍する馬たちをつくりたいと思っています。
昨秋、天皇賞を勝ってくれたへヴンリーロマンスもこの春から種付けを開始。ジョッキーとして最高の思い出をつくってくれた馬と、同じ春にともに新たな第一歩を踏み出します。



